(マンション管理内観外望)                                                                                  2009.10.27/11.9

区分所有建物

大規模修繕工事は「大規模の修繕」ではない (2009.11.9)

管理組合後見制度の提案 (2009.10.27)

 

大規模修繕工事は「大規模の修繕」ではない

マンションの一般的な大規模修繕工事には建築確認申請や建築士の設計・監理が必要ないとされているようですが、その根拠は?

 

建築基準法5条の4(建築物の設計及び工事監理)

・建築士法第3条第1項(同条第2項の規定により適用される場合を含む。に規定する建築物の工事は、それぞれ当該各条に規定する建築士の設計によらなければ、することができない。

・建築主は、第1項に規定する工事をする場合においては、それぞれ建築士法第3条第1に規定する建築士である工事監理者を定めなければならない。

・前項の規定に違反した工事は、することができない。

 

建築士法第3条(一級建築士でなければできない設計又は工事監理)

・次の各号に掲げる建築物を新築する場合においては、一級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。

… 鉄筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が300平方メートル、高さが13メートル又は軒の高さが9メートルをこえるもの

・建築物を増築し、改築し、又は建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をする場合においては、当該増築、改築、修繕又は模様替に係る部分を新築するものとみなして前項の規定を適用する。

 

建築基準法6(建築物の建築等に関する申請及び確認)

・建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。

一  別表第一()欄に掲げる用途に供する特殊建築物(共同住宅等)で、その用途に供する部分の床面積の合計が100平方メートルを超えるもの

 

建築基準法2(用語の定義)

・大規模の修繕  建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。

・大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。

・主要構造部   壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

 

屋根の葺替え、防水工事に係る大規模の修繕(建築確認の対象)の取扱いについて

平成12126日 鳥取県土木部建築課

(取扱い)

屋根、外壁に係る修繕について、鉄筋コンクリート造の屋上の防水の修繕、瓦屋根等の野地板

などの下地をつつかない瓦のみの葺替え、下地をつつかない外壁の仕上げ材の修繕については、

建築確認申請は不要である。

(考え方)

屋根、外壁に係る修繕について、主要構造部の過半となれば、建築基準法第6条第1項により、

法6条第1項第1号から3号に掲げる建築物については建築確認申請を出す必要がある。主要構

造部とは、防火上の見地から主要な役割を果たす構造部分であることから、下地と仕上げを含め

た全体を指すものと考えられる。

従って、鉄筋コンクリート造の屋上の防水の修繕、瓦屋根等の野地板などの下地をつつかない

瓦のみの葺替え、下地をつつかない外壁の仕上げ材の修繕については、主要構造部の一部分の修

繕であり、主要構造部そのものの修繕とは言い難いことから、建築確認申請が必要ないと考えら

れる。

なお、折板屋根のようにそのものが屋根の構造体である屋根については、そのものが主要構造

部となることから、その葺替えが過半であれば確認申請が必要である。

 

実際の工事では

外壁塗装の塗替え工事や屋上防水の改修工事は躯体そのものの工事ではないということで、建築確認や建築士は必要ないとされているのでしょうが、実際の工事はそれ程単純ではありません。

外壁塗装の塗替え工事では、躯体コンクリートのクラック補修が行われることも珍しくありません。また屋上防水の改修工事でシート防水を採用した場合、数多くのアンカーが屋上全面のコンクリート床版に打込まれます。

まさに鳥取県土木部の通達にあった「下地をつつかない」場合ではなくなります。

 

そうするともう一つの判断基準である「過半の修繕」であるか否かが問題になりますが、形式的に「過半」の意味を問うても仕方ないように思います。どの程度の工事なら建物の安全性等について専門的判断を必要とするか、ということかと思います。しかし現在の建築確認や建築士が修繕工事による建物の安全性等について適格な判断ができるかどうか疑問です。

 

管理組合後見制度の提案

管理組合が機能せず荒廃が進むマンションをどうするか

 ・管理組合が機能せず、実質的な管理者も存在しないようなマンションで、例え一区分所有者が何とかしようと思い立っても、かなりの自己犠牲を覚悟しなければ現状を打破する事は難しいでしょう。また現在の法制度のもとでは、一人でいくら頑張っても、どうにもならい場合も多いと思われます。

 ・それでは、今後どのような環境が整備されれば良いのか、自分の頭の中でいろいろとシミュレーションしてみました。そして思い至ったのが「管理組合後見制度」とでいうカタチです。

 

管理組合後見制度

 ・自然人の場合には、行為能力に欠ける人を保護するために後見制度があります。この後見制度に倣って、自立的な活動のできない管理組合を支援する方法が考えられないでしょうか。

 ・民法の「後見」を持ち出すまでもなく、区分所有法の管理組合法人の節には「仮理事」の規定があります。「第49条の4 理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない。」と。

 ・例えば、管理組合も管理者も機能せず、マンションの管理に支障が生ずる場合に、

区分所有者または利害関係人が特定機関(裁判所または他の指定機関)に「仮管理者」の選任を請求する

⇒ 特定機関は仮管理者を選任し、全区分所有者等に通知する

⇒ 仮管理者は区分所有法の「管理者」に順ずる権限と義務を持って、このマンションを管理する

⇒ 正規の管理者が選任されると、仮管理者は退任する

というような方法はどうでしょうか。

 ・これにはもちろん法制度の整備が必要になります。

 ・仮管理者の報酬や管理のための費用は、最終的には区分所有者全員の負担に帰すべきものですが、それが徴収されるまでのつなぎ資金の確保についても手当しておかなくてはなりません。

 ・仮管理者には誰が適任でしょう? まず考えられるのはマンション管理士ですが、個人のマンション管理士では引受け難い場合や、信用・信頼を不安視されることが予想されます。そこでマンション管理士会が保証する、あるいは士会自身が仮管理者になる体制が必要となります。

 ・そのためには、士会が現在のように任意設立の一般社団法人等では不十分で、行政書士会のように法律に根拠を持つ法人とするか、マンション管理適正化法に定めるマンション管理業者の団体のような指定法人にする必要があるでしょう。