(マンション管理 内観外望)                                                                                     2009.7.29/10.10

関心と問題意識

1.「区分所有」は欠陥制度?

2.郊外型中層マンション団地の将来は?

3.団地管理組合が各棟を管理するということ

 

1.  「区分所有」は欠陥制度?

私は、築30数年の高経年マンションに住んでいます。2045階建、500戸強の団地です。何度かの大規模修繕を経て、現在の住環境は落ち着いているのですが

 

売却価格は確実に低下し続け、それどころか売却しようにも買い手が付かない物件も結構あるようです。店舗、45階の住戸

 

建物の高経年化とともに、ご多聞に漏れず、住民の高年齢化も進んでいます。しかしエレベータはなく、足の弱った人には階段の上り下りが一苦労。

エレベータの設置は、今のところ管理組合として検討されていませんが、やろうとしても難しいでしょう。費用のこと、配置のことなど特に12階の人と45階の人の利害の調整は絶望的に思われます。

 

30年を過ぎると、教科書的には「建替え」を検討する時期だと言われ、また最近は「建替え」ではなく「再生」だとの議論もあるようです。しかしこのマンション団地では、「建替え」はおろか、エレベータ設置を含めて「再生」についても具体的な検討に入る見込みはないように思います。私自身は「脱出志向」です。

 

それでは、このマンションはこれから一体どうなるのか? 長期的に見れば、住民の低所得化と空き住戸の増加が徐々に進み、行き着く先はスラム化?

少なくとも区分所有者と管理組合だけではどうにもならない時期がそのうちに来るように思えてなりません。

 

元をただせば、「区分所有権」に基づく「分譲マンション」というのが、欠陥制度・欠陥商品ではなかったのか?

昭和4050年代に、一般大衆の持家志向に便乗して、デベロッパー等の供給サイドの利益を図った政策だったのではないでしょうか。

あれから30年以上が経ちました。「建替え」を成功させた例もあるようですが、たまたま条件が良かったというだけで、一般化するのは無理でしょう。

 

2.  郊外型中層マンション団地の将来は?

私が住んでいるマンションは分類すれば「郊外型中層マンション団地」といったとろ。30年以上前に当時の住宅公団があちこちで開発していたものに類似した、大手私鉄系ディベロッパーの開発になる、今となっては旧式のマンションです。

日当たり・風通しなど、旧式は旧式なりの良さがあり、管理組合も機能しており、今の生活環境は概ね良好ですし、今後10年くらいは何とかなりそうです。

 

しかしその先を展望しようと思うと、全くもってお手上げです。住民の高齢化・低所得化、空き住戸の増加、組合役員のなり手不足、再生不能...悲観的過ぎるかもしれませんが。

こんなことを思いあぐねていたときに目にしたのが、多摩プラーザの山森氏が書かれた「住宅管組合の脆弱性」という一文。何かと共感できる内容でした。

 

氏は言います:「マンションや団地といった共同住宅の居住者が、平等の権利と義務のもとで、その共同住宅の維持管理をすること--現代社会にあって、これは奇跡ではないか...入居当時だけではない。30年も、40年も、それを継続する。その間に入居者は入れ替わる。建物は古くなる。

1960年代前半に、...法律が間に合わなくなって、苦肉の策として居住者が組合員となって管理組合を結成し、共同して住宅の管理にあたる現在の方式が追認されたというのだ。

日本の農村では、かつて農家が水路や...里山を自主管理していたが、そのDNAが潜在的に法律家たちをつき動かし、都市住宅の所有者自身が自主管理する現在の方式が誕生したと考えられる。もちろん、都市住宅の入居者にもかつての農民のDNAが受け継がれていた。」

 

しかし、これからは農民DNAでは対処できない事態の出現と農民DNAの喪失という両面から、村落共同体的管理組合は立ち行かなくなるように思います。

農民DNAでは対処不能の例として、山森氏は超高層マンションの管理センターや機械室の複雑さ・専門性について述べています。

管理組合の役員を輪番制で選んでいるマンションも多いと思います。これまでは「輪番制で断れない」と言われれば、大概の組合員者は不承不承でも引き受けてきたものが、これからは「承諾なしに役員になることはない」と民法を盾に主張する人が増えるかもしれません。これなどは農民DNA喪失の例といえるでしょう。

村では村の掟に背けば、「村八分」などの制裁があったのですが、現代社会で自力救済は不法行為!

 

3.  団地管理組合が各棟建物を管理するということ

私の所属する管理組合は、20棟の区分所有者(団地建物所有者)で構成される団地管理組合法人で、団地建物所有者全員で共有する管理事務所等の施設だけでなく20棟の建物も管理しています。このように団地管理組合が各棟建物を管理しているのが一般的なようです。

 

このような状況のもとで、ある棟の区分所有者全員が自分たちの棟を自分たちだけで管理したいと思ったらどうしたら良いでしょうか。

通説は、団地管理組合の管理対象の変更にあたり、規約の変更が必要になる。従って団地管理組合の総会で特別多数決議によって、規約を変更しなければならない。なお特定の1棟のみを管理対象から外すことはできず、外すとすれば全棟を管理対象から外すことになる。

 

これで良いんでしょうか。ある棟の全員が自分たちだけで共有する建物を自分たちで管理しようと思っても、簡単には実現できない。これって大げさに言えば憲法29条で保障されている財産権の不当な侵害ではないででしょうか。

 

そもそも団地管理組合が、団地建物所有者全員の共有物ではない各棟建物を管理できる法的根拠はどこにあるのでしょう。それは区分所有68条(規約の設定の特例)ですが、これには厳しい条件が付されています。団地管理組合が各棟建物を管理するためには各棟の集会で承認(特別多数決議)する必要があるのです。

 

しかし私にはこのような承認決議に参加した覚えがありません。実は私がマンションを買った当時は区分所有法に団地の規定はありませんでした。しかし団地規定ができる前後にかかわらず、分譲業者が作った原始規約とやらを承認して売買契約をしたということが根拠になっているのでしょう。

それならば区分所有法68条にどんな意味があるのでしょうか。

区分所有法の原則は、各棟建物は各棟の管理組合が管理し、団地建物所有者全員が共有する土地・施設等を団地管理組合が管理するというものでしょう。団地管理組合が各棟建物を管理するのは「特例」なのです。

 

区分所有法には、団地と各棟建物の関係に似たものとして、建物の共用部分と一部共用部分があります。そして団地の各棟建物の管理に比べて、建物の一部共用部分の管理には強い自立性が認められているように感じます。

一部共用分とは何か? その管理実態は? 区分所有法には謎が多いです。