(マンション管理内観外望) 2010.3.22
管理組合の会計基準
1.会計基準
(1) 管理組合財務会計の手引
(2) 管理組合の会計基準
(3) 管理組合会計
3.会計基準の事例
(1) 企業会計原則
(2) 公益法人会計基準
(3) 非営利法人の会計基準
1.
会計基準
(1) 管理組合会計基準が制定されていない
現在に至るまで、マンション管理組合向けの会計基準が定められていないことに加えて、マンション管理業を営んでいる管理会社においてもその会計基準はまちまちとなっています。本来は、管理組合の会計実務の中の慣習として用いられている会計処理が、やがて一般的な処理として広まり、この中から、更に、一般に公正妥当と認められるものを要約して、管理組合の会計基準として作成されることがのぞましいのです。そして、この管理組合会計基準は、必ずしも法令によって強制されなくても、すべての管理組合がその会計を処理するに当って従わなければならない基準として位置づけられることが理想なのですが、残念ながら、現在このような管理組合会計基準は存在していません。
(吉岡順子編著「新版 マンション管理組合財務会計の手引」(マンション管理センター 2004)より)
(2) 会計基準とは
会計基準とは、会計処理および会計報告における法規範である。会計基準そのものは国家が制定する法律ではないが、慣習法として法体系の一環を成す規範である。
会計基準は、英米法系の慣習として発達、体系化された法規範であり、広義の会計基準には明文化されていない規範を含む。狭義には、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものとして明文化された法規範をいう。…
なお、会計基準は財務諸表の表面的な書式や表示に関する規定のみではなく、主に実質的な内容や金額の計算等に関する規定である。
(「会計基準」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)より)
2.
管理組合会計基準の提案例
営利企業、マンション管理組合を問わず、会計の本来の目的は、
@利害関係者に対して、説明責任(アカウンタビリティ)を十分果たす
A利害関係者の意思決定にあたり、適時に有用な情報開示(ディスクロージャー)をする
という2点に集約されると考えられ、この目的を達成するためには、会計が、誰の目からみても妥当であるとわかるような一定の決まり、すなわち一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて行われることが大切になります。
マンション管理組合は非営利法人のため、管理組合会計基準として、公益法人会計が基本となるものと考えられますが、公益法人会計は、会計の専門知識がないとわかりづらいことに加えて、管理業務を委託している管理会社では、管理組合会計について、企業会計の思考を取り入れた独自の会計手法が採用されています。
そこで、本書では、公益法人会計(注1)の枠組みに沿った会計基準を採用し、管理組合にとり不適切であると思われる点については、企業会計の手法を取り入れて、新たな管理組合会計基準(試案)を提案しました。また、その際、平成15年3月に公表された公益法人会計基準改正案(注2)の内容も勘案し、現行の公益法人会計基準よりも、管理組合会計基準として適切であると考えられる点については、積極的にその内容を取り入れましたが、逆に現行の公益法人会計基準の定める内容の方が適切であると考えられる場合には、現行基準を採用しています。
いずれにせよ、一般に公正妥当と認められる管理組合会計基準というものはまだなく、今後、管理組合会計の実務の中から慣習が発達し、一般に公正妥当と認められるものが形成されることが必要と思われます。そして、これを要約し、必ずしも法令により強制されなくとも、すべての管理組合がその会計を処理するに当たり従わなければならない基準となることを願ってやみません。
管理組合会計基準の内容 (注3)
1一般原則
(1)真実性の原則 (2)正規の簿記の原則
(3)明瞭性の原則 (4)継続性の原則
(5)保守主義の原則 (6)重要性の原則
2特有原則
(1)区分経理の原則 (2)予算準拠性の原則
3貸借対照表原則
(1)作成原則 (2)評価原則
(3)報告原則
4資金収支計算書原則
(1)計算原則 (2)報告原則
5財産目録原則
(1)作成原則 (2)評価原則
(3)報告原則
6附属明細書原則
(1)作成原則 (2)報告原則
(注1) 現行の公益法人会計:昭和52年設定、昭和60年改正の旧・公益法人会計(基準)のこと。一取引二仕訳、正味財産増減計算書など、特有の考え方があり、企業会計に馴染んだ人には分かり難いものであった。
(注2) 公益法人会計基準改正案:平成16年全面改正、平成20年改正の現・公益法人会計基準の原案のこと。企業会計の方法を大幅に取り入れたが、管理組合になじみの深い「収支計算書」ではなく「正味財産増減計算書」が採用された。
(注3) 管理組合会計基準(試案):この試案で提案されている貸借対照表は一般的な二期比較報告式のものであるが、資金収支計算書は一般的な予算実績比較式収支計算書にキャッシュフロー計算書(間接法)を付け足したような形になっている。
…現行の実務慣行を会計基準として成文化すると、具体的にどのような基準になるのでしょうか。
現行のマンション管理組合会計の主な特徴は、@非営利、A予算準拠、B目的別会計(管理費会計と修繕積立金会計などの区分)です。これは特に非営利法人に見られる特徴ですので、マンション管理組合会計基準を策定する場合には、非営利法人の会計基準が参考になると思われます。
現在、公表されている非営利法人の会計基準の中では、労働組合の会計基準と平成16年改正前の公益法人の会計基準がマンション管理組合の実務に極めて近いものと考えられます。
以下は、日本公認会計士協会が公表している公益法人委員会報告第5号「労働組合会計基準」(昭和60年10月8日)をベースに監査法人フィールズが作成したマンション管理組合の会計基準(案)です。
このような会計基準を各組合の管理規約等に定めることで、現状の計算書類の作成根拠を明文化することが出来ます。そこで初めて監事による会計監査の実効性が確保され、公認会計士(又は監査法人)による外部監査の導入も可能となります。
1.マンション管理組合の会計基準
(会計基準はなぜ必要か)
(会計基準の作成は決して難しくない)
(具体的な会計基準について)
2.計算書類の体系
(管理組合の計算書類の現状)
(計算書類の体系は必要性に応じて)
3.重要性の原則
4.収支計算書と資金の範囲
(実質的な違いは「資金の範囲」)
(「資金の範囲」の意義)
(積立マンション総合保険)
(マンション修繕積立債券)
(共用部分のリフォームに関する融資)
5.管理組合会計の目的と計上すべき資産
(いかなる資産を計上すべきか)
(組合財産と会計)
…企業、学校、病院、労働組合、商工組合さらには社会福祉法人など、法的に認められた組織や団体では、その会計処理には必ずそれぞれの会計基準というものが存在します。
しかしながら管理組合の財務会計については、いまだ会計基準というものが存在していないため、それぞれの管理会社及び管理組合ごとに様々な会計処理が行われており、平成16年9月現在、統一された管理組合会計基準はありません。
・会計理事に選出されたのですが、どのような会計処理をすべきでしょうか?
・格調高くする必要がない、もっとわかりやすくすべきとの意見で、今までの収支決算書・貸借対照表・財産目録などの様式を廃止し、自治会やPTAで行われているような簡単な収支報告だけで済まそうとした。(財務諸表の一定様式は明瞭性の原則から要求されているものですが、これでは逆の論理になっています。)
・管理会社から提出された決算書では、一般会計には収支報告書と貸借対照表があるが、特別会計は収支報告書だけで貸借対照表がない。何を根拠に要求したらよいのか
など、さまざまな相談を受けました。これらの説明にはどうしても本来あるべき会計基準というものを前提に説明せざるを得ません。
ここでは管理組合会計を公益法人会計を基礎とし、下記の原則に準拠するものとして扱います。
管理組合会計の基本原則
(1) 管理組合会計の一般原則
@ 正規の簿記の原則
・ 網羅性があること(管理組合の財産の動き及び状態をすべて表していること)
・ 検証性があること(検証可能な証拠に基づいて記録されていること)
・ 秩序性があること(体系的に整然と記録されていること)
・ 複式簿記を原則とすること
A 真実性の原則
会計書類は、会計帳簿に基づいて、収支及び財務状況に関する真実な内容を表示したものとすること
B 明瞭性の原則
会計書類は、区分所有者などの利害関係者に、収支及び財務状況を明瞭に表示したものとすること
C 継続性の原則
会計処理の基準及び手続きについては、毎年継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと
(2) 管理組合会計の特有原則
@ 予算準拠の原則
収入及び支出は総会(集会)で決議された収支予算書に従い、支出については予算内にとどめること
支出が予算を上回る場合には、管理規約で定めた予備費の流用や臨時総会(臨時集会)による決議などによること
A 区分経理の原則
(管理費会計または一般会計)=日常の維持管理に関する会計業務、
(修繕積立金会計または特別会計)=将来の大規模な修繕工事費に備えるための会計
は、区分して経理すること。
3.
会計基準の事例
日本の企業会計の教育的指導的役割を果たす憲法的存在であった。 しかしながら、新たな基準が次々と策定され現在では死文化している部分も多々ある。
企業会計原則は、企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないが、すべての企業がその会計を処理するに当って従わなければならない基準である。企業会計原則は、将来において企業会計に関係ある諸法令が制定改廃される場合において尊重されなければならないものであった。…
しかしながら、現在新たに設定される会計基準の理論的根拠は主として概念フレームワークに基づいており、企業会計原則は新たに設定される会計基準の根拠としてはほとんど重視されていない。
(「企業会計原則」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)より)
・「企業会計原則」(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
・「企業会計原則」(RONの六法全書 on LINE)
・「企業会計原則注解」(RONの六法全書 on LINE)
「公益法人会計基準」は、昭和52年3月4日に公益法人監督事務連絡協議会の申合せとして設定され、昭和60年9月17日に公益法人指導監督連絡会議決定による改正が行われて、公益法人が会計帳簿及び計算書類を作成するための基準として活用されてきた。
その後、平成16年10月14日に公益法人等の指導監督等に関する関係省庁連絡会議申合せとして全面的な改正が行われ、新「公益法人会計基準」…が平成18年4月1日より施行された。
平成18年に公益法人制度改革関連三法が成立し新制度を踏まえた会計基準を整備する必要が生じたため、今般、内閣府公益認定等委員会において、改めて公益法人会計基準を別紙のとおり定めることとした。
(「公益法人会計基準について」(内閣府公益認定等委員会)より)
・「公益法人会計基準について」(内閣府公益認定等委員会 H20.4)
・「「公益法人会計基準」の運用指針」(内閣府公益認定等委員会 H20.4)
「非営利法人統一会計基準についての報告書」(日本公認会計士協会近畿会公益会計委員会 H12.12)より抜粋